この度JNカイロプラクティック整体院Ayaを閉院することになりました。
縁もゆかりも無い沖縄にて11年余り、お陰様で順調に経営してきた整体院ですが、ついにこの5月、ここを閉めることを決意しました。 長いと言えば長いし、短いと言えばあっと言う間の11年、幸か不幸か患者さんに惜しまれつつの閉院です。正直、このままあと10年位はスムーズにやっていけそうな感じもあり、患者さん方に申し訳ない思いもないわけではありません。しかし骨盤矯正というのは、突き詰めると明確な医療行為に他なりません。万が一にも失敗して、患者さんに不具合の生ずるようなことが起こってはならないと肝に銘じて仕事している以上、「惜しまれつつの閉院」というのが、ベストなタイミングである、という思いもあり、これで良かったのだと思っています。
その決断に至るには、コロナ騒動も大きなインパクトとなりました。
自分が感染しない、そして患者さんを感染させないという努力を日々入念に継続するということが、改善をしっかり実感できる施術を行うという従来の使命と共に、仕事の中で大きなウエイトを占めるようになりました。
毎回の施術でも出来うる限り慎重に丁寧に注意深く行なう様心がけておりましたが、そこにコロナ禍での様々な配慮が加わったのです。
当院を利用される患者さんの中には基礎疾患をお持ちの方もかなりの割合いらっしゃることは認識しておりましたので、万が一にもそうした方々に感染させるようなことが起きては大変です。院を一時閉鎖することも頭によぎったのですが、感染拡大真っ只中であっても、当院を利用したいという患者さんの数が減ることはありませんでした。むしろ完全予約制で一対一の施術を受けられる環境は、大きな病院よりもずっと安全安心に感じられ、積極的に来院されている方が多かった印象です。そのニーズに応えるべきとの思いも湧き、結局一時閉鎖することなくコロナ禍をしのぎました。
一人一人の施術後の徹底した清掃、細部に至る除菌、室内の空気の入れ替え、そして自分自身の体調の徹底管理、患者さんの体調確認など、そのお陰で幸いにも、県内の感染爆発下にあっても当院での感染は全く発生しませんでしたし、その点については「良くぞ全う出来た」と自分自身を大いに褒めたいとも思いますが、一方で私の心身への負担は従来の何倍にもなっていたと思います。現在はずっと落ち着き余裕も出てきてはいますが、引き続き用心は欠かせず、この仕事を継続する以上、コロナ以前のような状態に完全に戻ることは今後もないのだろうと感じます。今は適応できても、私の年齢が上がるにつれ徐々にそれを苦痛に感じることも増えていくかもしれない、という予想は当然に生まれました。それに加え、自分の今後の人生を睨み、その最終章に向け更なる一歩を踏み出すには十分な余裕をもって立ち向かいたい、という思いも生じ、そうしたことを様々詳細に検討した末に、出した結論です。
人生100年時代、残りの人生をどう生きるべきかと真剣に考えた末の決断、と言って良いでしょう。
二十歳の若者が30年先を見据えてみたと考えればば分かり易いでしょうか。自分が20歳の時に50歳というのはどれほど先に感じられたことか。実際、活動的な若者にとっては途方もなく先の事に感じられるのではないでしょうか。しかし、還暦を超えた今感じるのは、与えられた時間は若くても老齢でも結局同じであり、何十年というスパンは今の私にとってもとても長く感じられる、ということでした。
確かに若さに溢れた時期と、老齢期では時間感覚は明らかに異なる面もあります。けれど、まだまだ20歳の方々とそれほど変わらない希望の持てる時代になりました。それだけでなく、好奇心旺盛で健康でありさえすれば、それまでの経験を踏まえてさらに広く大きな歩を進めることもできるのです。そう考えると、とてもワクワクしますね。
コロナの時に職場と住居の分離も行いました。住居を他へ移すことで、先程の「感染しない、感染させない」を徹底するためでした。おかげでここ数年は、仕事場としての家に通勤しておりました。今回この整体院を閉めるにあたって、今後の生活には転居した先の環境の方がより好ましいと判断、大いに気に入っていたこの家、沖縄南部のコバルトブルーの海の見える高台の家も処分することを決めました。
なぜこんな場所(商業施設や人通りのない場所)で整体院を開いたのか不思議に思われたのでしょう、思い起こすと開院当初、何度か質問されました。漫然とただそこに整体院があるから施術を受けに行くという受動的なケースではなく、その整体院での施術をこそ受けたいから訪れる、というのであれば、場所は関係ありません。不便な場所であることは、むしろ患者さんが本当に治したいと思っているかどうかの試金石になります。治そうと思ってもいない患者さんに施術するほど大変なことはありません。そういう意味では、人通りも少なく静かで海を望める場所、というのは最高の環境でした。この素晴らしい環境と家に出会えたことも、私の仕事にとっては本当にラッキーなことだったと、今でも思います。神様に深く感謝したいくらいです。
そんなお気に入りの家との別れも、もうまもなく・・・。感慨深いですね。
私の施術は、時に患者さんとの戦いでもありました。施術をただ施し改善を促すだけでなく、不調に至るそもそもの原因をも取り除かなければ、また再発する可能性もあるのです。施術時に繰り返しお話を伺うことで、根本原因がどこにあるか色々と探っていきます。しかし、例えば長年の生活習慣に基づく根本原因が特定(推定)されて、それを防止するためのアドバイスをしても本気で治そうと思っていない方の生活を変える、行動変容を促すことは簡単ではありません。これはもう、少々大袈裟かもしれませんが、患者さんとのある意味本気の「戦い」と言っても良いでしょう。10回言っても生活を改善しようとしない方、そんな方にはきつい言葉も必要な場合がありました。骨盤の変形、それに起因する腰痛等もある意味で生活習慣病です。骨盤のずれは時に自律神経へも波及し、様々な複雑な症状をも引き起こすことすらあるのです。根本原因を取り除くことは、時に人生を大きく左右させる程大切なことだと、痛感しています。それを患者さんに理解していただきたい、そして確実に行動変容を果たして頂きたい、と私も幾度となく患者さんとの真剣勝負を挑みました。
何度か再発して、やっと言われたことの意味を深く理解して頂ける場合もありました。私にとっては残念ではありましたが、骨盤など、骨がいとも簡単に動き歪む、ということを実感できていない患者さんには必要な経験だったのかと思います。
原因もはっきりせず、長年常に何らかの不調に苛まれている、日常的に不安や苦痛に悩まされている、そんな方々の深い悩みに寄り添い、粘り強く施術を行い、少しずつその根本原因を取り除き、安心できる、生き生きとした暮らし・人生への道案内をしたい、微力ながら、少しでもお役に立てればという思いで始めた仕事です。そしてこの10年余、振り返ると、それなりに一定の貢献はできたのでは、と思えます。当初から、かなり重たい責任を自分に課し、最低10年はそれを継続することを目標に日々の仕事に打ち込んできたつもりでしたので、今は、しっかり目標を果たせた、という清々しさ、嬉しさも感じています。
この仕事を通じて、人間の身体と心について、食べ物・食べ方について、睡眠・眠り方について、動作や身体の使い方について、日常の過ごし方、人生の送り方、その思いや気迫について、人間を取り巻く環境について、社会や自然との関わり方について、現代医療医学の限界について、そして正しく「生きる」ということについて、等々、数多くの学びと認識を深め続けることができました。これは、私の今後の人生においても、全てが本当に大きく役立つことばかりです。これらをしっかりと噛み締め、私自身の血肉として、残りの人生に向け大きな歩みを進めていきたいと思っています。
最後になりますが、私を取り巻く全ての物事、そして私とご縁のあった全ての方々、これまで当院の活動を支えていただいた多くの皆様に心からの感謝を申しげます。「ありがとうございました・・・」